視覚像としての文字――シャルコーの自己催眠実験

アール・ヌーヴォー―フランス世紀末と「装飾芸術」の思想

アール・ヌーヴォー―フランス世紀末と「装飾芸術」の思想

ある夜、シャルコーはハシッシュの吸引の効果を自分自身で試して、その印象を記録しようと思い立った。麻薬が効いてくるとすぐ次から次へと変化する混乱したヴィジョンが彼の頭に浮かんだ。彼はますます奇妙になってゆき、次第に判読するのが難しくなってゆく文字で特徴を書き留め始めた。[…]そののち言葉は読めなくなってゆく。文字は明らかに細長くなってゆき、ジグザグや螺旋形に歪み、絡み合った模様をなし、葉や花びらや建築モチーフの形に変形し……もはや文字ではなくなっている。ページ全体が線描で覆われている。不思議な龍やしかめ面の怪物、支離滅裂の人物たちが互いに重なり合い、くねり、ものすごい渦巻きになり、ボッシュやジャック・カロの黙示録的な世界を思わせる。
(Henri Meige, Charcot-artiste, Paris : Masson, 1925, in Georges Guillain, Jean-Martin Charcot : sa vie, son œuvre, Paris : Masson, 1955, p. 22-23. 邦訳は上掲書、160-161ページより再引用。)