思考の屑篭

☆ルドゥにおける「団結(union)」概念
「ショーの理想都市」は、産業(製塩)と自給自足を可能とする農業、さらには商業(街の中心の市場、また貯蓄庫や証券取引所などの金融期間)のシステムを備えた、自立的なコミューンとして構想されていた。この理想都市を統制する鍵概念のひとつが「団結(union)」である。この「団結(union)」はまた、フリーメイソンの教義であり、フランス革命理念となった「fraternité」(兄弟愛を媒介とした結社性)とも通底している。
 「ショーの理想都市」内部には、「団結の館(maison d’union)」(図18)と命名された建築物が予定されていた。ここでは建築物の形態や構造が、住民たちの団結を促進すべく構想されている。すなわち、全室に共通の歩廊は柱廊形式を採り、人々が議論を交わす場となる。また学習用の小部屋は、この教育施設が輩出した偉人たちを住人に想起せしめる、いわば記憶劇場としての機能を果たすというのである。
 「団結」概念に対するルドゥのレトリックは、彼の思想を同時代の文脈から考察する際に、非常に示唆的である。すなわち、国家における人民の団結を、「人体を構成する諸部分の完璧で分離不可能な結合」、「帝国の活き活きとした魂(l'ame vivifiante)」、さらには建造物の強固な基礎部分に擬えるのである。

力は一カ所に取り集められなければ弱いものである。社会に包摂される人々は、共通の利益にまつわる関心事を中心に結びつくとしても、しかしまた、秩序を保ち美徳を昂進させるためには、団結が是非とも必要である[…]実際、人体の精巧な構造を、人間を構成する諸部分の完璧な組み合わせをご覧いただきたい。この連結は相互的であるから、総体としてのまとまりを壊すことができるはずもない。団結は帝国の活力溢れる魂である。尊敬の念によって、光に眼を眩まされた人民はその眼差しを頭部(=為政者)に注ぐ。それは団結の周囲へと集まる光線に他ならない。
Toute puissance est foible si elle n’est pas réunie, et quoique l’homme en société soit lié à tous les genres d’attractions qui concentrent les intérêts communs, cependant l’union est si nécessaire pour maintenir l’ordre, accélérer les élans de la vertu […]. En effet, voyez l’ingénieuse structure de l’homme, voyez le parfait assortiment des parties qui les constituent ; tant que l’enchaînement est mutuel peut-on décomposer son ensemble ? L’union est l’ame vivifiante des empires ; la considération qui fixe sur une tête les yeux d’un peuple ébloui, n’est autre chose que les rayons qui se concentrent sur elle […]. [117]

団結はすべてに拡がり、幾世紀にも及ぶ栄光を讃えた記念建造物の、不滅の大理石を固く結びつける。それは偉人も庶民もあらゆる暴力から保護される、難攻不落の要塞である。
L’union s’étend à tout, elle cimente les marbres immortels des monuments qui attestent la splendeur des siècles ; c’est la forteresse impénétrable où les grands, les petits sont à couvert de toute violence […]. [117]

団結は幸福の源である。この名誉ある制度を無視してはならない。
L’union est la source du bonheur ; croyez moi, ne dédaignez pas cette institution honorable. [118]

 引用部に示した通り、ルドゥは国家における人民の団結について、人体構造とのアナロジーを用いる。人体の「精巧な構造(l’ingénieuse structure de l’homme)」という表現には、デカルト(動物機械説)やラ・メトリ(人間機械論)らの機械論も影響しているであろう 。同時にまたこの類比関係は、ルソーによる『百科全書』掲載の「エコノミー(economie / oeconoie)」の定義とも近似している。

政治的身体は、個別にみるならば、人体と似た生命ある有機的身体として考察することができるであろう。至上権(主権)は頭部を為す。
Le corps politique, pris individuellement, peut être considéré comme un corps organisé, vivant, & semblable à celui de l'homme. Le pouvoir souverain représente la tête […].