顔面考 (河出文庫)

顔面考 (河出文庫)

「顔」、より正確に言えば「顔にまつわる病理」について、精神疾患の症例から都市伝説や漫画までを網羅したエッセー。深い分析に切り込むというよりは、様々な現象を幅広く掬い上げ列挙したもの。「人面瘡」をテーマにした漫画が、これほどたくさんあることに驚いた。
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顔というテーマに関しては、「顔=他者が自分に対して付与するアイデンティティ」という扱いで、それ以上の思索があるわけではない。テロリストと顔の入れ替わったFBI捜査官の、本人としての「同一性」や「連続性」を証明してくれたのは、血液型以上に「他者と共有された記憶」(妻との最初のデートでのエピソード)であった。(ちなみにこの作品では、「声紋」も一致させるべく、捜査官の喉にチップを埋め込む手術を施している。もともとはテロリストの弟から秘密を聞き出すための術策だったため、「指紋」や「血液型」、「DNA」などに関しては無頓着である。)
アクション場面での空間や小道具の用い方が実に巧妙。垂直方向の落下運動がダイナミックに映える吹き抜け空間、見え隠れする敵の姿がサスペンスをもたらす、倉庫や衝立を多用した空間、人物の登場を予告する白い鳩など。観客と正対した銃口から、斜めに蛇行しながらスローモーションで銃弾の飛び出すショットが独特。