奇想科学の冒険―近代日本を騒がせた夢想家たち (平凡社新書)

奇想科学の冒険―近代日本を騒がせた夢想家たち (平凡社新書)

幕末から明治にかけて、今日では「トンデモ」の部類に入る学説を本気で唱えた人々の言説と半生を、当時の社会状況とともに追ったもの。地球平面説からソーシャル・ダーウィニズムのヴァリアント、ユートピア思想にロボット夢想、さらにはメスメリズムまで。個人的には、『経国美談』で政治小説の祖として知られる矢野龍渓が、モアやカンパネッラ、ベーコンらに言及したユートピア小説『新社会』を書いていたことに興味を惹かれた。『経国美談』もまた、舞台が古代ギリシアという点では、無理矢理というか、後代の大河ロマン的マンガやライトノヴェルを先取りしていたというか、ともかく相当変な作品であったことは間違いない。
崩壊について

崩壊について

廃墟論は既に数多く物されているが、これは工学畑の著者によるもの。時間の作用によって、あるいは一瞬の災禍によって、重力の原則に従い崩落してしまう建築物の諸例を集めたもの。
ピラネージが描く廃墟が、長期間の時間経過に晒された結果であるのに対して、ユベール・ロベールはしばしば、「一瞬の崩落」を描いた。その対比(あるいは、ロベールにおける新しい時間意識・廃墟意識?)を考える上で、この書がヒントになるかもしれない。