ルドゥーに代表される「語る建築(l'Architecture parlante)」を、パースの記号の3分類に当て嵌めてみることはできないだろうかと、ふと考える。建築物の外観が、その用途や性質、住人の身分を直接に物語っている(例えば、「樽職人の仕事場」としての建築は、樽のタガを重ねた形に作られている)という点では、一見「イコン」に該当しそうにも思える。しかし、「語る建築」は決して、「類似物」や「代用物」ではない。あるモノが別のモノに似ているがゆえにその代用物となる(=イコン)のではなくて、樽型の建築物はその用途を「直接的に」「それ自身において」物語っているのである。「別の何かに類似したもの」ではなくて、「それ自身」であるような存在。ここから、何らかの議論を発展させられないだろうかと考えている。