TERRE NATALE : AILLEURS COMME ICI @ Fondation Cartier

  
実は2日からパリに来ている。宿にほど近いダンフェール・ロシュロー駅界隈をうろうろしていたら、カルティエ財団(Fondation Cartier)を示す標識を発見。一度出掛けてみたいと思っていたギャラリーだったので、渡りに舟と足を向ける。

現在開催されているのは、「TERRE NATALE : AILLEURS COMME ICI」と題された映像展示。レイモン・ドパルドンとポール・ヴィリリオが企画・制作を手掛けている。

生まれた土地、そこからの(そこへの)定着と移動が、展示を貫くテーマとなっていた。
ドパルドンが手掛けた映像作品は二つ。様々な都市(ワシントン、ロサンゼルス、ホノルル、東京、ホーチミンシンガポールケープタウン)の相貌と、そこを往来する人々の流れを捉えた《La tour du monde en 14 jours》と、南米やアフリカ、そしてフランスの「少数民族」「少数言語話者」のインタビューで構成されている《Donner la parole》。前者は各都市のリアルな「モビリティ」を捉えたもの。ホーチミンのバイクの群、東京の駅構内を足早に通り過ぎていく若い女性たち、現地人とは明らかに異なる風体と行動の、外国人旅行者たち、携帯電話での「ここではないどこか」との会話、高速道路を走り過ぎていく自動車……後者の映像は、やけに映像が鮮明で美しいこともあって、National Geographicを思わせる仕上がりだった。そこで「語られて」いる内容は、非常に深刻で政治的なものだったにも関わらず。フランス国内の少数言語であるブルトン語オック語を、初めて耳にする。時折フランス語の語彙が混ざるものの、下部の字幕に映し出される「標準的な」フランス語とは全く異なる言語だ。フランスという国の広さと不均質さを実感。
地下に降りると、ヴィリリオ企画による映像作品が。大展示室には、数十台のモニターがグリッド上に並べられ、あるときは一斉に、あるときはバラバラに、自然風景や都市情景を映し出していた。無名の都市断片もあれば、XXタワーのようなランドマークもある。部屋の隅には比較的大きめのモニターが置かれ、ヴィリリオが今回の展示の意図を説明している映像が流れている。街を歩きながら、今日の世界的な人口移動について語るヴィリリオは、ほぼ等身大、観者とだいたい同じ高さに立つように映し出されていた。
奥にある円形の小部屋で上映されていた映像は、すべてCGによるもの。人口移動を生じさせる諸要因について、地図やグラフ、ダイヤグラムで説明したもので、教育的かつ分かり易いものだった。アート作品というより、むしろ教材ビデオ的。(今回の展示は全体的に、アートというよりは政治的・教育的なメッセージ性の強いものだった。それでも、「環境やマイノリティについて考える、子供たちのための夏休み企画」風にならなかったのは、映像やその上映手法の美的な要素のお蔭だろう。)
中二階にあるブックショップの一角には、《Donner la parole》の制作メモやポラロイドが展示されていた。例えばアマゾンの少数民ヤノマミへのインタビューでは、ヤノマミ語からポルトガル語へ、ポルトガル語からフランス語へというプロセスで字幕翻訳がなされていたことが分かる。


カルティエ財団の入るビルディング、設計を手掛けたのはジャン・ヌーヴェル。晴れた日には平坦なガラス面に、モンパルナスの街並と雲と青空が映る。


これはカルティエ財団近くで見つけた建物。装飾が面白いのでカメラを向けたら、偶然ガラスにモンパルナスタワーが映り込んでいた。