Agnès Giard, Intelli Yakuza, L'imaginaire érotique au Japon, Albin Michel, 2007.
昨秋のディジョン「祭典」(ジャポニスム系フェスティバル)で存在を知り、書店の画集コーナーでたびたび見掛けつつも躊躇していた一冊、遂に意を決して購入。内容は、江戸時代の春画や陽物崇拝といった歴史的事象から、会田誠らのファインアート、B級のピンクもの、コスプレやギャル男まで多岐に渡っている。鳥肌実中将閣下も堂々六頁掲載。今やもはや一種の紋切り型・ブランド記号と化した「アングラ」を、インテリを装った好事家趣味で取り上げているという側面もなきにしもあらずだが、個人的にはなかなか楽しめる一冊だった。日本側の相当な協力を得たためなのか、「外国から見た不思議の国ニッポン」という体ではなく、日本人が読んでもあまり違和感を感じない出来となっている。雑多なものを詰め込んだゆえの苦心の策だろう、章毎の分類と整理の仕方が面白い。

  • La culture de la culotte(ブルマの文化)
  • La culture de la honte(「恥ずかしい」の文化)
  • L'eau et les tentacles(水と触手:大蛸に犯される少女から嘔吐ショーまで、中扉には大地をかき混ぜるイザナギイザナミを描いた小林永濯の画が。この章立ての仕方は巧妙だと思う。)
  • L'histoire de revenants(幽霊の歴史)
  • La violence(暴力)
  • Les poupées(お人形:球体関節人形からロリータ少女写真、ダッチワイフ、会田誠の描く四肢を切断された少女まで。)
  • Travestissements et métamorphoses(異性装と変身)
  • La crise de la masculinité(男性性の危機)
  • La révolution des filles(少女革命)
  • L'industrie du sexe(性産業)
  • Les jouets pour adultes(大人の玩具)

表紙絵は山本タカト。破綻も逸脱もない完璧な描線が、リアルな身体性や生々しい劣情を一切感じさせない、まさしくideal(観念的かつ理想的)なエロティシズムを演出している。