リール近代美術館所蔵 ピカソモディリアーニの時代(Bunkamuraザ・ミュージアム
展覧会名に冠されている割には、ピカソは8点、モディリアーニは12点、全体の出品数に比すると決して多くはない。キュビスム以降のフランス近代絵画史の概要を、リール美術館所蔵の作品で辿れるようにした展覧会という感じだ。芸術運動やエコールの展開をきちんと追えるような構成にはおよそなっていないのだが、逆にコレクションとしての嗜好・偏向が伺えて面白い。(それにしても、この手の美術館展・コレクション展は、母体となるコレクションの収蔵品構成をどれくらい忠実に反映しているのだろうか?)
ピカソやブラック、レジェ、アンリ・ロランスのキュビスムを扱った第一部、モディリアーニとルオーを中心に据えた第二部はメジャーな作家ばかりだが、素朴派を取り上げた第四部などは、少なくとも日本ではあまり聞かない画家の作品も数多く出品されている。
モディリアーニの人物像は、固有名の冠された肖像画にはきちんと眼球が描き込まれているのに、「裸婦」や「母」、「少年」と名指された人々の瞳は空洞である。モディリアーニの作品すべてにこの法則が当てはまるのかどうかは分からないけれど。モディリアーニの描く顔面については、しばしばアフリカの仮面からの影響が指摘されるが、自分が連想したのは、眼に嵌めた宝石が脱落して空洞になってしまった古代彫像である。穿たれた穴の奥に、闇に沈んだ虚ろな空間があって、何処も見ていないようにも、何処にいてもその視線が追ってくるようにも思える、そんな不気味で迫真的な眼。