たとえこの句がニーチェの手によって書かれたものであることに人びとが確信をもてると思っても、おそらくこの句はニーチェのものではないかもしれない。自分の手で書くとは、いかなることなのか?人は自分の手で書くあらゆるものを引き受け、それに署名するのであろうか?署名という構造そのもの(署名/墓)は、こうした疑問の形式を失格させる。
ジャック・デリダ『尖筆とエクリチュール白井健三郎訳、朝日出版社、1979年、197頁。)