【メモ】絵画とヴェール:日本絵画のなかの「ヴェール的なもの」

喜多川歌麿葛飾北斎の浮世絵には、しばしば「ヴェール」的なもの=あちらとこちらを遮断しつつ透かし見させる表面が登場する、という感触がありつつ、それ以上は掘り下げられていなかったのだが、ジークフリート・ヴィッヒマンという研究者の著作『ジャポニスム』(Siegfried Wichmann, Japonisme, London, 1981)の「格子と柵」の章に、次のような分析があると知った。引用は馬渕明子ジャポニスム:幻想の日本』より。

 

浮世絵版画に描かれる障子や格子戸などの格子構造は、ヨーロッパの芸術家たちによって、美しくも効果的な、ヴェール状の空間分割の工夫と見なされた。歌麿はそれらを使って、浮世絵版画の伝統に従っていささか乱雑ではあるが、別の絵画空間を作り出した。

(馬渕、93-94頁より再引用(Wichmann, p. 233.))

 

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喜多川歌麿《四手網》18世紀末〜19世紀初、ボストン美術館など

馬渕のジャポニスム論は、このような浮世絵における「透かして見させる」効果(田中英二のいう「すだれ効果」)との共通点を、モネのいう「à traverse」に見出してゆく。