蛙が殺された、
子供がまるくなつて手をあげた、
みんないつしよに、
かはゆらしい、
血だらけの手をあげた、
月が出た、
丘の上に人が立つてゐる。
帽子の下に顔がある。
萩原朔太郎「蛙の死」、『月に吠える』1917年)

あけがたの黒いミルク 僕らはそれを夕方に飲む
僕らはそれを昼に朝に飲む 僕らはそれを夜中に飲む
僕らは飲む そしてまた飲む
僕らは宙に掘る そこなら寝るのに狭くない
パウル・ツェラン「死のフーガ」、『パウル・ツェラン詩集』飯吉光夫訳、小沢書店、1993年、18-21ページ)