アートフル・サイエンス―啓蒙時代の娯楽と凋落する視覚教育

アートフル・サイエンス―啓蒙時代の娯楽と凋落する視覚教育

論理が気紛れに飛躍したり、居心地の悪い省略が一杯のがらくた満載の棚や箪笥は、お喋りの一見したところ無構造なあり方にそっくりだった。[…]ローレンス・スターンの『感情旅行』(1768)とゲーテの『若きヴェルテルの悩み』(1774)の一大特徴とこの頃になって公認された、文を中途で止めてしまう頓絶法(aposiopesis)は、喋りのパターンの流動性、ランダムなあり方を真似る修辞学的方策と言うに尽きる。ダッシュ、省略記号、半ばで消えてしまう文章、そして沈黙さえもが、18世紀小説を支配した統辞法と句読法の書作法的桎梏からの解放を象徴していたのである。私の考えでは、断片にしていくこの口誦-視覚的なテクスト構成は、[…]博学のヴンダーカンマーの各々孤立した品々を支配していたのと同じ破断、没関係のパターンに従っていたのである。幾何学的形式を持たぬ形態は要するに「字知らず」なのであった。断片たる廃墟(ruins)はルーン文字(runes)なのであって、つまりは頽壊した古代のモニュメントを飾る忘れられた鴃舌の異文字と似ていた。時の経過によって消され、人間の記憶から抹消された擦り切れた碑銘は空無な能書体[ルビ:カリグラフィー]となり、意味なき装飾と化した。18世紀ヴァーチュオーソたちにとって底なしに魅惑的だった斑点だらけの破片たちは古典語の明晰を以ては語らず、「もっと晦冥な方言」によって語った。
(上掲書、281-283ページ)