技術が担保する「人形」とその隣接領域について。

ルネサンス期の奉納蝋人形(ex voto)の技術が、18世紀後半には蝋製解剖学模型(ムラージュ、ラ・スペコラ博物館やサン・ルイ病院のものが有名)の分野に流入したことはよく知られているけれど、ラ・スペコラ開館とほぼ同時期の1770年代にはPierottiという一族がイタリアからイギリスに移民し、ワックスドールの工房を立ち上げている。(もっともV&A美術館サイトには、イギリス人の妻の一族から蝋人形制作術を学んだとあるので、これが正しいならフィレンツェの蝋人形の伝統とは無関係? http://www.museumofchildhood.org.uk/collections/dolls/pierotti-doll/) 19世紀のイギリスには、他にもMontanariというイタリア系の名前のワックスドール・メーカーがあった。

・独特の深みのある瞳が表現できるペイパーウエイト・グラス・アイは、当時の義眼作成技術を流用したものらしい(典拠はオンライン上の記述だけれど)。
・paperweight glass eyesのブリュ・ジュン(1880-90年代)

20世紀初頭のミュラー社製ガラスの義眼:http://dbprng00ikc2j.cloudfront.net/work/image/213813/qg7swq/medicine_14_l.jpg
森美術館で2009年にあった「医学と芸術」展に出展されていたもの)
ミュラー社は現存しているらしい:http://www.muellersoehne.com/en/m_omogonproteser.htm

・関節部分が可動なアーティキュレイテッド・ジョイントは、義手や義肢の制作技術と連携していた可能性もありそう。これは関係があるとすれば、幼児を象ることの多い玩具としてのpoupéeというより、むしろ成人のほぼ等身大の身体を表したmannequinの分野だろう。
・19世紀の義手
http://www.sciencemuseum.org.uk/broughttolife/objects/display.aspx?id=92623
・ダリとマネキン
http://maerchendiver.tumblr.com/post/47720749689/salvador-dali-in-his-youth
・19世紀後半の芸術家用モデルのマネキン
http://25.media.tumblr.com/tumblr_me5ne7jEJ91r3rsfmo1_500.jpg