近代都市パリの誕生---鉄道・メトロ時代の熱狂 (河出ブックス)

近代都市パリの誕生---鉄道・メトロ時代の熱狂 (河出ブックス)

「近代都市パリ」の形成史に関しては、既に膨大な数の文献があるが、これは技術者としての視点(著者はパリのÉcole nationale des ponts-et-chausséesで博士号を取得したテクノクラート出身者)から、緻密にパリのメトロの発展史と都市計画との相互関係を論じたもの。
18世紀末には、鉄道計画の基底にはユートピア思想があったという。クロード=ニコラ・ルドゥーとエティエンヌ=ルイ・ブーレーは、フランスの鉄道行政を支えた高等教育機関であるポンゼショッセと、間接的・直接的な関係があった。土木工学の革新者であり、ポンゼショッセ初代学長を務めたジャン=ロドルフ・ペロネは、ルドゥーが王立製塩工場を設計した際の上司(総監)であった。ルドゥーの理想都市計画には、このペロネの思想がかなりの影響を及ぼしたのではないか、と著者は指摘する(28ページ)。また、ブーレーは「ニュートンのセノタフ」案を発表したフランス革命直前の時期、ポンゼショッセの教師であった。彼のメガロマニアックな都市計画案は、当時の学生たちを感化し、当時の設計コンクールにはブーレー風の作品が多かったという(29ページ)。