この詩がナルキッソスの泉から語り起こされていること、そして、この「危険なる鏡」に映った像によって主人公の愛が引き起こされていることを考えあわせてみれば、「像」への愛こそがこの『薔薇物語』の真のライト・モティーフであるように思われてくるだろう。実際に、ピュグマリオンと彼の彫像の物語と、鏡に映った自分の像に恋をしてしまった「伊達男」のエピソードとは、シンメトリカルに符合している。
アガンベン『スタンツェ』より139ページ.)