お知らせ

10月に開催される美学会第60回全国大会(於東京大学)で研究発表をします。ぜひご来聴ください。
10月11日(日)15:45-16:25(研究発表Ⅲ)@法文一号館113教室
「空間としての書物/建築としての文字――C.N.ルドゥーによる建築書を中心に――」
http://www.l.u-tokyo.ac.jp/bigaku/aesthetics60/paper.html

何故か今回は見知った面子が多いプログラム。初めて美学会で発表したのは、京都工芸繊維大学で開催された2004年の大会、そのときの「孤独さ」と比べれば、隔世の感がある。(ちなみに、そのときに司会を務めてくださったのが、故宮下誠先生であった。そのときの先生のコメントに、随分と励まされたものだ。その後ゆっくりお話を伺う機会もないまま、急逝されてしまったことが悔やまれる。)もっとも私は「陣取り合戦」には興味がないし、自分の研究を発表する機会を、ただ最大限に活用するまでだ。
以前に「Give us this day all that you showed me, the power and the glory till my kingdom comes」という、Ultravoxの曲の一節を引用したけれど、ここで私が「私の王国(my kingdom)」という言葉に込めているのは、自分だけに築きうる知の空間といった意味合いである。それは学科や大学やディシプリン間の派閥争いがもたらすような「私たちの帝国」ではおよそないし、象牙の塔や蛸壺といった比喩に代表されるような閉鎖的空間でもない。澁澤龍彦の提唱する「ドラコニア」のようなものと言えばいいだろうか。誰もがふらりと訪れて、陳列棚の間や庭園の小径を、そこに並べられたものを眺めながら散策できるような空間。もちろん、「そこに近づかない」という自由も担保されている。ちなみに上の曲は、「Give me all the storybook told me, the faith and the glory till my kingdom comes」と続いていく。「制作者の意図」が何処にあるかはさておき、自分のいちばん深部にある基盤が幼い頃の読書体験であることを考えれば、偶然のタイミングで出会ったにも関わらず、なんだか意味深長に思えてくる。