ルドゥー『建築論』の「エクスの監獄」に関する部分では、死者の頭部からその性格や罪状が分かるとする解剖学者「トルナトリー(Tornatory)」が登場する。白井秀和氏による註解付き邦訳(『ルドゥー『建築論』註解』中央公論美術出版、1993年)の訳注では、この「トルナトリー」なる人物については「不明」とあるが、モデルとなったと思しき人物は存在している。エクスに生まれプロヴァンス地方で活躍した解剖学者、Pierre-Claude-Jean Tournatoris(1730-1794?)である。アンソニー・ヴィドラーによれば、彼による解剖学博物館は、プロヴァンス地方で名声を博したという。BnFのサイトでざっと検索してみたところ、A. Makaire, Histoire de l'Université d'Aix : 1er fascicule / par le Dr Félix Chavernac,..., Aix, 1889という書籍内に、「La vie et les manuscrits du docteur Tournatori(トルナトリ博士の生涯とテキスト)」についての言及があるという情報を得た。このトルナトリは、おそらくエクス大学で重要な地位を占めた学者だったのだろう。
19世紀に書かれた彼の伝記の書誌情報も:Félix E. Chavernac, Le Docteur Tournatoris: sa vie et ses manuscrits, 1871.
http://openlibrary.org/b/OL3547908M/Docteur-Tournatoris