日焼けの文化史

こちらも先輩に教えて頂いたもの。2008年に2冊も刊行されているということは、最近の文化史研究で流行のテーマなのだろうか?

Pascal Ory, L'invention du bronzage : Essai d'une histoire culturelle, Editions Complexe, 2008.

Bernard Andrieu, Bronzage. Une petite histoire du soleil et de la peau, Paris, CNRS Editions, 2008.
同じ著者には、「触覚」とボディケアについて論じたと思しき、こんな著作もある模様。

Bernard Andrieu, Toucher : Se soigner par le corps, Belles Lettres, 2008.
「ハイブリッド」論も。(「キマイラ」や「monstre(怪物/畸形)」の問題系と接続可能か?)

Bernard Andrieu, Devenir hybride, Presses Universitaires de Nancy (Epistémologie du corps), 2008.
こちらは「剃毛」(脱毛も含むかも)の歴史について。

Jean Da Silva, Du velu au lisse. Histoire et esthetique de l'epilation intime, Paris, Editions complexe, 2009.
体毛と言えば、昨秋バルセロナで「Fantasia Erotica Japonesa」展に展示されていた田亀源五郎によるデッサンを見て、気付いたことがある。西洋美術史上も日本美術史上も、人体表現で「体毛」が描かれるということはまずないのである。(陰毛すら描かれないことが多い。その点で、同時代のアカデミスムの画家たちがルネサンス期と変わらぬツルツルのヴィーナスを描いていた時代に、《世界の起源》を描いてしまったクールベは、本当に凄い画家なのだろう。)私は漫画史には詳しくないけれど、一般的な漫画でも「体毛表現」はほとんど見当たらないのではないだろうか。田亀氏のデッサンの面白いところは、アカデミックなデッサン修業の精華と(彼は多摩美術大学日本画科の出身)、日本の漫画に特有の造形的約定と(例えば、黒髪に入れる「艶」の描き方)、身体を覆い尽くす体毛という、二次元に於いては実は「斬新」な表現が、違和感を感じさせることなく同居している点だと思う。
絵画における「体毛」に関しては、ダニエル・アラスが『なにも見ていない』の第4章で、「マグダラのマリアのヘアー」について語っている。

なにも見ていない―名画をめぐる六つの冒険

なにも見ていない―名画をめぐる六つの冒険