カタルーニャ民族博物館(バルセロナ、スペイン)

  
小さな博物館ゆえあまり期待していなかったのだけれど、カタルーニャ地方で20世紀前半まで制作されていた奉納物(ex voto)などの展示もあり、意外となかなか楽しめた。企画展は「アフリカ」。西欧によるステレオタイプの投影と領有の問題にも触れていて、小規模ながら良識的な展示であった。
  
日本のパートでは、鳥獣戯画に始まり『マーガレット』や『少年マガジン』に至る漫画史の概略の後、漫画の一場面を使って日本の伝統的・日常的生活を見せるという、不思議な展示形態が取られていた。(「マンガの国・日本」はサムライ・ゲイシャに代わるステレオタイプになりつつある。)写真はその一例。「雛祭り」の展示では、取り上げられているのはなんと『クレヨンしんちゃん』。娘の雛祭りパーティーで、お金持ちなおうちの優しくて美人なママを完璧に演じようとした「ネネちゃんのママ」が、しんちゃんの相変わらずの傍若無人な振る舞いに翻弄され、最後はヤンキー調の素地を露呈させてしまうというシニカルなストーリー。その下には、上品な雛飾りがひっそりと並べてある。日本語すら分からない学芸員が、適当に「雛祭り」の描かれている漫画を探してきた結果こんなことになったのか、それとも日本社会特有の慣習や約定まで知り尽くした人が、意図的に「日本人にありがちな愚かしさ」まで展示することを企てたのか、真相は謎。

地下室には、様々な地域のオブジェ集めた保管庫が、薄暗い照明の中そのまま展示されていた。戸棚の奥で静かに眠る、時間の漂流物たち。