Fantasia Erotica Japonesa

  
バルセロナ行きを決意したきっかけでもあったこの展覧会。正直、期待したほどでもなかった。個々の作品がもつ力はともかく、キュレーションが今ひとつというか、「何を見せたいのか」が伝わってこない。エロティックなファンタスムに関しての新しい切り口や、日本人が驚くような「違和感」もなかったのが残念。
最年少のインベカヲリ氏の作品にも期待していたのだが、彼女の最大の見せ所である「タイトル」と「セリー構成」を台無しにする展示で、これにもがっかり。個別の写真が「no title」で並んでいるだけなのだ。例えばこのシリーズ。「窓に隙間があって、そこから蚊が入ってくるの」という人を食ったタイトルと、唐突に差し挟まれる無関係な情景とに、この写真家の肝があるというのに。
今回の展覧会には、日本の若手(40代半ば以下)のアーティストたち十数名と、日本のエロスに影響された西欧のアーティスト数名の作品を対置させ、その反映関係を見せる、というコンセプトもあったらしい。西欧代表のアーティスト勢は、こぞって芸者や浮世絵、緊縛など、紋切り型のfantasia erotica japonesaを引用していた。正直なところ、Dijon Saitenに来ていた10代の方が、日本のリアルな「サブカル」や「アングラ」を呼吸していたように思う。

これは、Mottuというスイスのアーティストによる立体作品。甲冑という、いかにも「ガイジンの見たニッポン」な素材を使っているが、よく見ると「鉄骨の保護 賊軍 桜」などと意味連関の不明な単語が書き込んであって(鳥肌実のスーツ風)、可笑しい。甲冑の上から女性用の矯正下着を着せていたり、兜の前立の部分に逆さにした扇子を貼付けていたり、ステレオタイプな「伝統」をバカ殿的に笑うという感じの諧謔
  
展示風景。アーティストによる「作品」ばかりではなく、Doll Story社(日本の4woodsというメーカーの製品を扱っているリヨンの業者)のラブドールや、韓国製(なぜここで韓国なんだろう?)のプーリップ人形の展示即売もあり。田亀源五郎氏の描く「女性化された」男性身体も含めて、femme objetが並ぶ展示だった。
会場で紹介されていた薄い漫画本は、なかなか面白かった。Notes sur le Sumo (Bruel et Risto, 2007.Ristoは今回の出品作家の一人)。シュールさと1ミリ足らずの皮肉。日本人に典型的な「顔」や、皇室の面々の象徴性を茶化す手つきは、『Tokyo』のレオス・カラックスと通底するものがあるかも。
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