空中紳士
- 作者: 耽綺社同人
- 出版社/メーカー: 春陽堂書店
- 発売日: 1994/07
- メディア: 文庫
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あのオペラグラスね、あれは普通のオペラグラスではなくて、正面を向けていて横のほうが見える仕掛けになっているペリスコープ式の眼鏡なんです。[…]正面を向いていながら横を見つめているんです。あの人自身の感じがそんなふうなのよ。恐ろしい人ですわ。
(22ページ)
このペリスコープとやらは、「眼鏡屋が俗に側面鏡と呼んでいる品」で、「ドイツ製のお化け眼鏡」であるらしい。wikipediaでは潜望鏡と同義とされている。望遠鏡の一種のようだが、『空中紳士』では「見ていることを見られることなく見る」ための装置として登場する。それは、神出鬼没の謎の人物でありながら、本人は事件の全てをお見通し、「雲隠れ」しつつも天上から万事を眺め下ろしているという、響晰その人の存在とも通じている。
パリ、クリニャンクールの蚤の市にあった、古いカメラと写真を売る店。この棚には拳に隠れるくらいのミニチュアカメラが並んでいた。ステレオスコープも二眼レフもあったが、ペリスコープの類はなかったはず。