「シアタープロダクツの現場」展(渋谷 PARCOミュージアム

theatre productsは、「theatre」の語が端的に示す通り、服を作って見せて売るという一連のプロセスを、スペクタクル的、パフォーマンス的に行なっているアパレルブランド。だからと言って、純粋なアート・「作品」志向でも、職人・手作り志向でもなくて、あくまで「現代における衣服=大量生産品・商品(products)」であるという点を、確信犯的に自覚して活動している。

この点は、やはりPARCOで展覧会を行なったデザイナー、スーザン・チャンチオロの「手仕事の復権+作品的な一点物」路線とは対照的に思われる。(展覧会に合わせて発売された『The Book of Theatre Products』内では、松井みどり氏もシアターの対立項としてチャンチオロの名を挙げている。)

今までも、食糧ビル内にテントを作っての展示会(ほとんどインスタレーション)、ダンスユニットKATHYや矮人マジシャンマメ山田と組んでのショー、生きているマネキン展示(演劇的というか、サーカス的)、一枚の布になっているTシャツを顧客が剥がして買うプロジェクトや、お店のインテリアとして積みあげられた枠だけの椅子(それなんて川俣正?)が実は購入可能な商品で、売れるにつれ店舗インテリアが変わっていく仕掛け(販売プロセスへの顧客≒観客参加)など、いろいろ面白くて変なことをやってきたブランドだ。大量生産の洋服を使ったパフォーマーと言ってもいいかもしれない。

もちろん、現代アートや演劇、パフォーマンスの分野では、疾うに「前衛」でなくなった方法の二番煎じではあるし、KATHYを引っ張り出してきたり、松井みどりと対談したり、あまりにも趣味が良くて、その上ある種のモード系ブランド(ギャルソン、ヨウジ、チャラヤン等)がやりがちなアート系知性派路線を臆面もなく踏襲している感もあるけれど、今の日本のデザイナーの中ではたぶんいちばん面白いのではないかと思う。

展示作品自体は、それほど多くはない。入り口付近の天井には、大量の花柄スカートが吊るされていて、まるでジャングルに生えている蔓性植物のように、観客はそれをかき分けて進まなければならない。(ちなみにこのスカートと同じ商品が、7000円くらいでミュージアムショップで販売されている。)スカートの森を抜けると、ベニヤで作られたドールハウスのような書割のような空間が現われる。シアターのアトリエ・事務所がそのままここに移転してきているのだ。洋服を作るバックステージのプロセスも展示品になっているという仕掛けである。私が見たときは、デザイナーの二人と数人のショップスタッフらしき若い女性たちが打ち合わせをやっており、奥では若い男性スタッフが「引越しのサカイ」のパンダの描かれたダンボール箱開封していた。

そこを抜けると、2004年SSコレクションのときのポスター、一枚のビニールから剥がして購入できる花柄バッグ(技法的には、ミヤケイッセイのA−POCみたいな感じ)が壁に貼ってあり、さらにその奥には各シーズンのコレクションから代表的なデザインをピックアップした、サンプル品展示コーナーがある。さらに奥まったところにはテレビが一台あって、過去のショーの様子を流している。(画面が小さすぎて見難いこともあって、これは展示としてはあまり面白くなかった。)

書籍『The Book of Theatre Products シアタープロダクツのメソッド』の帯には、「ファッションは、あらゆる場所を劇場にします」と書かれているけれど、それではシアターの服が演劇的かと言えば、そうでもない。あくまでも、服を作り売るプロセスが劇場的なのであり、顧客=消費者はそこに参加する「観客」なのであって、個々人が服を纏い消費するモメントは、このブランドの言う「劇場」とはまた別のスペクタクル空間に属するものなのだろう。

こちらが想定している範囲を突き破るような「新しさ」にはなかなか出会えないけれど、それでもファションの世界も日々面白いと思える展覧会だった。