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ピラネージについての基礎研究の第一人者ジョン・ウィルトン=エリーによる列伝的概説書と、ピラネージ自身によるテクストのアンソロジー
☆John Wilton-Ely, "The Mind and Art of Giovanni Battista Piranesi", London: Thames and Hudson, 1988.

ピラネージは、現代の我々をも強く惹きつけている。近年、ピラネージへの関心が高まる中で提出されてきたトピック、すなわちグラフィック・アーティストとしての卓抜さや、西欧での古遺物に対する視座に与えた変化、空想という主題といったものが、この入念な研究の焦点となっている。このような観点は、ピラネージ作品の視覚的な意義を認識する上で重要なものだ。しかし、ピラネージ独自の偉業を幅広く理解するに際しては、これらの諸点はむしろ本質的な要素を見え難くしてしまいがちである。
挿図のふんだんに用いられたこの研究書において、世界的なピラネージの権威であるジョン・ウィルトン=エリーは、この驚くほど多才な芸術家がもつ複雑な性質について、十全な再評価を行なっている。彼の著書は、ピラネージの生涯と作品のあらゆる側面を網羅する。そこで強調されるのは、古代ローマの考古学研究の第一人者としてのピラネージの重要性、技巧的なイラストレーションの質の高さ、そして1760年代のギリシア・ローマ論争において彼が果たした役割である。著者は、この画家の思想がもつ啓蒙的世界――新古典主義の誕生と本質的に結びついているもの――と、適切な表現のために近代的形態が探求された様を、ヴィヴィッドに再構築してみせる。そして、建築構想や家具デザイン、装飾案、古代遺跡の想像的復元の中から、ピラネージの思想に基づく形態を提示する。
数多くの挿図――部分拡大図、ページ全体にわたる複製図ともに――には、下絵素描や刊行された全ての銅版画集からの一刷、それからもちろんピラネージによる建築作品の写真が含まれる。高名な二冊のエッチング集『ローマの景観』と『牢獄』にいたっては、一枚の図版を一ページ大に、完全版としての復刻がなされている。
ハル(Hull)大学の美術史学名誉教授であるジョン・ウィルトン=エリーは、現在ソースビー(Sotheby)の教育学のディレクターである。ウィルトン=エリー教授は、1978年にロンドンのヘイウォードギャラリーで開催されるピラネージ200周年展の企画も手掛けている。
(背表紙の書籍紹介より)

目次
I.Apprenticeship: Venice and Rome, 1720-1750
II.The Vedutista
III.The Artist as Archaeologist
IV.Controversy
V.The Fever of the Imagination
VI.Freedom in Design
VII.The Closing Years

☆John Wilton-Ely(ed. & introduction), "Piranesi, Polemical Works, Rome 1757, 1761, 1765, 1769", London: Gregg International Publishers, 1972.
収録テクスト

  • Lettere di giustificazione scritte a Milord Charlemont e a di lui agenti di Roma, Roma, 1757.(『チャールモント卿への弁明書』:『ローマの古代遺跡』出版の際のパトロンであったイギリス人貴族チャールモント卿との行き違いの際にしたためられた、弁明と抗議の書簡。卿の誤解は結局解けず、ピラネージは『ローマの古代遺跡』の扉頁に描かれた石碑から、卿への献辞を削っている。)
  • Della Magnificenza ed Architettura de'Romani, Roma, 1761.(『古代ローマ人の偉大さとその建築』:ギリシアエトルリアの遺産を継承したローマ建築の、ギリシア建築に対する優位を説いたもの。)
  • Osservazioni sopra la lettre de M. Mariette aux auteurs de la Gazette Litteraire de l'Europe(フランス人版画家ジャン・ピエール・マリエット1694-1774が『古代ローマ人の偉大さとその建築』に寄せた批判への再反論)
  • Parere su l'architettura(『建築論 対話』(建築に関する意見):邦訳あり)
  • Della Introduzione e del progresso delle belle arti in Europa ne'tempi antichi

以上3つはRoma, 1765.

  • Diverse maniere d'adornare i cammini ed ogni altra parte degli edifizii desunte dall'architettura Egizia, Etrusca e Greca con un ragionamento apologetico in difesa dell'architettura Egizia e Toscana, Roma, 1769.(『エジプト、エトルリアギリシア建築から引き出された暖炉その他の建築各部の様々な装飾法、付エジプト、トスカーナ建築擁護論』:ギリシア、エジプト、エトルリアの意匠の混合により、新しい装飾と様式が誕生することを説く。)

ところで、Elyの発音は「エリー」でよいのか、「イーリー」なのか。綴りが「Eley」だったら「イーリー」なのだけれど。