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- 作者: 松浦寿夫,岡崎乾二郎
- 出版社/メーカー: 朝日出版社
- 発売日: 2005/12/16
- メディア: 単行本
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先日のシンポジウム「藝術の変貌/藝術学の展開」での議論と合わせて考えたこと。
(きわめて単純な)価値相対主義や構築主義は、もういい加減陳腐化していると思う。もはや乗り越えるべき対象は、言語論的転回以前の価値観を未だに疑わない旧守派(権威派にみえて実は少数派)ではなくて、思考停止状況を生み出しかねない「正論」の方なのではないだろうか。
それから、目の前にある状況の確認的な記述と、ある種の「インテリ」が共有するpolitically correctな価値規範に基づく当為的な判断とが、混淆してしまっている言説が多いように思う。あらゆる差異や分節を「社会的に構築されたもの」で片付ける単細胞的構築主義がその典型だけれど、「もうひとつの」とか「複数の」とかいう語を冠した議論も、ともすればそのきらいがあるのではないかと。
モダンな価値体系が、そのままでは維持されていないのは事実だけれど、それに基づく差異が強固に存続し続けているのも事実だろう。例えば「なぜこれがアートなの?」という類の問いも、「アート」と「非アート」の区切りが、歴然として存在するからこそ発せられるわけで。
これはシンポジウムとは直接関係ない話だけれど、理解しているという身振りをとりつつ、結局は保守的な価値にコミットしている研究者も多いのね。そのような自分の「迷い」を、自省的・自覚的に言語化してみせた宮下(誠)氏はとてもスマートだと思うけれど、ゼミでストイキッツァとかギンズブルクとか取り上げつつ、本音は大陸的かつ「人文主義的」な美術史学にどっぷりな方々も多いということですよ。