2009-08-01から1ヶ月間の記事一覧

「窓ガラス」のテマティックに関連して、お勧め頂いたヒッチコックの『バルカン超特急』を観る。 憶えることと忘れること、視覚的記憶の確かさと聴覚(的記憶)の不確かさや機能不全というテーマが横臥しているように思う。 外国語であるが故に、あるいは周…

お知らせ

10月に開催される美学会第60回全国大会(於東京大学)で研究発表をします。ぜひご来聴ください。 10月11日(日)15:45-16:25(研究発表Ⅲ)@法文一号館113教室 「空間としての書物/建築としての文字――C.N.ルドゥーによる建築書を中心に――」 http://www.l.u-toky…

断片としての身体

Deborah Ann Harter, Bodies in Pieces: Fantastic Narrative and the Poetics of the Fragment, Stanford Univ Press, 1996. http://www.amazon.co.jp/dp/0804725071/

corps morcele

ヒッチコック-シャブロルのラインで思い出したこと。二人とも、フレームによって登場人物の身体を分断するときのやり方が上手いのだ。例えば『見知らぬ乗客』の冒頭での、膝下だけの脚が、駅の雑踏を足早に歩んでいくシーン。「見知らぬ乗客」ブルーノ(と後…

ジャン・コクトーの『オルフェ』(1949年)を観る。ギリシア神話に登場する詩人オルフェウスの冥界巡りを、現代(最初の戯曲執筆時は1926年)を舞台にリライトしたもの。「鏡」がテーマの映画を挙げるならば、必ず言及されるべき作品だろう。此岸と彼岸の境…

夢の中の建築旅行

Francesco Colonna, Hypnerotomachia, The Strife of Love in a Dream, London, 1592, fac. NY & London, Garland Publishing, 1976. フランチェスコ・コロンナによる『ポリフィロの夢』(16世紀に出された英訳版のファクシミリ)。「書物」の上で様々な建築…

もはや「誰の得になるんだ?」という感じだが、気付いてしまったので。 ヴィスコンティ作『地獄に堕ちた勇者ども』での、ナチス高官が自動車から降りるシーン(左の動画の冒頭)が、右のPVの50秒近辺で「引用」されている。肩章付きのベルテッドジャケットに…

ブルジョワの室内と装飾品としての「教養」

音楽史を専門とし現在はフランス留学中の知人から、1920年代のフランスで「ピアノ税」なるものが課されていたことを聞く。奢侈税の一種だったのだろうかとか、この頃から比較的富裕な市民階級にピアノが普及していったのかもしれないなどと考えを巡らせると…

ヒッチコックの『見知らぬ乗客』を観る。自分のような門外漢が論じるまでもないほどの著名作だが、気付いた点をいくつか。 類似のシーンが二度(あるいは複数回)繰り返される。一度目は重要な出来事の伏線として、二度目は単なる無意味なエピソードとして。…

アナクロニズム日記その2

「謎のデザイナー小林かいち」展(ホテルニューオータニ) 今回展示されているのは、全て絵葉書や封筒のグラフィックデザイン。彼の描くテーマは、叙情的で感傷的な少女趣味の世界なのだが、それが「少女同士の親密なコミュニケーション」の媒体に載せられる…

アナクロニズム日記その1

「かたちは、うつる」展(国立西洋美術館) 夏になると西洋美術館で開催される、版画や素描をテーマとした展覧会。その中でも今回の展示は、テーマ設定の仕方がとても新鮮で面白い。版画は原版を紙に「転写」することでイメージを得る技法だが、ここでの「う…

「未完成」としての断片と「フェティシズム」

フェティシズムのようなタイプの精神的プロセスが、詩的言語にもっとも共通の転義のひとつにいかに内在しているかを観察するのは興味深い。提喩(そしてそれに一番近い換喩)がそれである。部分によって実現される全体に換えて、その部分を置くこと(あるい…

leisure and pleasure

左はスタンリー・クレイマー制作、マーロン・ブランド主演の『乱暴者(The Wild Ones)』(1953年)がダイジェスト的に紹介されている映像(ナレーションはフランス語)、右はアメリカを震源地にMTVカルチャーが開花した時代に作られた、Visage「Pleasure Bo…

観相学と探偵術

バルザック論作者: E.R.クルティウス,小竹澄栄出版社/メーカー: みすず書房発売日: 1990/05メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 4回この商品を含むブログ (1件) を見るバルザックにおける神秘主義を説いた著。クルティウスによるこの理解がどこまで妥当性を…

Une saison en enfer

ひょんな切欠から、私の中で勝手に始まったボーイ・ジョージ・レトロスペクティヴ。どうせならこれを契機にこの手の人たちを一気に極めようと、Visage(Steve Strange)、Classix Nouveaux(Sal Solo)、Dead or Alive、Spandau Ballet、Adam and the Ants、…

カラクテール概念の射程

始終、此本をお読み下さる間じゅう、著者はさまざまの性格即ち当世気質の色々を描いているのだということを、念頭においていただきたいということである。まったく、私はそれらの性格を屢々フランスの朝廷や我が国民の間から採ってはいるけれども、さればと…

strange eyesその5

もはやSteve Strangeはすっかり置き去りの感があるこの企画。先日のエントリでも紹介したフランスのB級「スペース・ロック」グループ、Rocketsの私設ファンサイトを眺めていたら、彼らが1974年には「グレーのコンタクトレンズ」を使用していたという記述を見…

スタンツェ―西洋文化における言葉とイメージ (ちくま学芸文庫)作者: ジョルジョアガンベン,Giorgio Agamben,岡田温司出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2008/03/10メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 21回この商品を含むブログ (25件) を見る メランコリーと…

思考の屑篭

「表情/表出」とは、表現しようとする事物の、素朴で自然な類似のことだと私は考える。それは必要不可欠のものであり、絵画のあらゆる部分に存在している。「表情/表出」なしでは、タブローは完全たり得ない。個々の事物の真の性格(カラクテール)を画定…

「かたちは、うつる」展(国立西洋美術館)