2004-03-01から1ヶ月間の記事一覧

松山巌『まぼろしのインテリア』を読了。日本の住宅(とりわけその内部構造)とそれを取り巻く認識枠組みとの相互関係、時代ごとの特異性や変遷を、明治維新からオイルショックに至るまで辿った書。公的機関が主導する形で建設されたアパートの構造や間取り…

神奈川県立近代美術館の葉山別館でベン・ニコルソン展を観る。原色のコンポジション/対比や差異による分節化/中間色の調和/グラデーションが必然的に意味してしまう光と陰影/三原色と無彩色と長方形と円/絵画の純粋性とか還元性とか自立性とか/白の上の白/絵…

パゾリーニ監督によるフィルム『リコッタ』を観る。(4人の監督によるオムニバス『RoGoPaG』の中の一篇である。)ジャーマンの『カラヴァッジオ』中の活人画シーンに示唆されて、突発的に類似テーマを扱った作品を観たくなったのだ。キリスト受難劇を扱った映…

デレク・ジャーマンによる『The Angelic Conversation』を見る。圧倒的にうつくしい画像に、囁き声の朗読が時折絡む。(シェイクスピアのソネットだという。)愛し合う男同士、まるでゴルゴダ行きのキリストのように、木材を背負って歩いてゆく孤独な面持ち…

「戦後短篇小説再発見」と銘打たれたアンソロジーの第六巻目、『変貌する都市』を読んでいる。第二次大戦直後から1990年代半ばまでのそれぞれの時代の都市観あるいは都市イメージを、特徴的な短篇小説の中から掬い取ろうとする試みの一冊。選出されている作…

『イジー・トルンカの世界3』を観た。「楽しいサーカス」(これはパペットアニメーションではなく、セルアニメ)の幻想的な図柄がとりわけ良い。無表情でどこか虚無的な面持ちの観客たちとか、機械仕掛けの蝶々のような軽業師とか。

シュヴァンクマイエルの『オテサーネク』を観た。汚物というか、アブジェクシオンみたいなものにしか見えない食物の写し方が秀逸。食べ物のはずなのに、なんかもう吐瀉物とか糞便とか精液みたいなのだ。食欲が悪魔的に肥大化した切り株赤ちゃんオテサーネク…

デレク・ジャーマンの『カラヴァッジオ』を観る。絵画制作の過程をカメラで捉えた、一種のメタ絵画映画だ。カラヴァッジョ作品を既知のものとする眼には、絵画モデルとして登場する人物群像が、むしろ活人画として見えてしまうという倒錯。画布という表層上…

イジー・トルンカ『短編集2』 安楽椅子の人造人間おばあさんが微笑ましくもキッチュな「電子頭脳おばあさん」他三篇 デレク・ジャーマン『ザ・ガーデン』 どこか不吉さを湛えながらも、美しいイメージのモンタージュ。ゲイへの迫害が、キリストの受難に重ね…

BunkamuraのGalleryで開催中のハンス・ベルメール展に行ってきた。球体関節人形を写したモダン・プリントが殆どだが、エッチングやデカルコマニー作品、またベルメールが挿絵を手掛けた書籍(『眼球譚』や『マダム・エドワルダ』など)も展示されている。窃…

メゾン・エルメスのギャラリーで開催中の『幽霊たち ジョン・ケスラー+ポール・オースター展』に足を運んだ。オースターの小説『幽霊たち』に登場する人物やテーマを、インスタレーション作家ケスラーが組み立てた展示。床には色とりどりの色紙(いろがみ)…